コンチェルトゲートフォルテの世界に思いを馳せて、旅するように街に暮らす。妄想全開エッセイ風な何か
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ウィルノアは急勾配の海岸を持ち、海が深い
貿易の拠点として栄えた所以だ
波間にたゆたうゴンドラは
観光資源であると同時に、市民の脚でもある
非日常と日常のあいまいさが魅力的
深い深い小運河。透き通る海底には石像が散見され
これは、古代ウィルノアの死生観を現しているらしい
海の底は死者の世界。石像は故人を偲ぶ墓であり
水面は生と死を別つ狭間なのだ
ゴンドラ遊覧のガイドさんは、かなり年配のお爺さん
彼は巧みな櫂さばきの傍ら
ウィルノアの死生観や歴史について教えてくれた
ガイドのお爺さん曰く
お婆さん(つまりはお爺さんの奥さんだ)のお墓が海底にあるそうで
毎日会えるから寂しくないんだ、とニカリと笑う
私は神妙な顔付きで、海底をのぞき込む
ゆらりゆらりと揺れる水面は
世界の境界のあいまいさを現しているようで
なんとも不思議な感覚に囚われる
水面を挟んで、寄り添う世界
これまで、お爺さんとお婆さんはこの海をどんな気持ちで渡ってきたのだろう
感極まり、今にも泣き出しそうな私
そんな私を見るとお爺さんはもう一度
しわくちゃの笑顔でニカリと笑ってくれた
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